丸鶏をじっくり煮込む夏の滋養食
韓国には、季節になると食べたくなる料理があります。その代表的な料理の一つが「タッペクスク(닭백숙)」です。特に暑さが厳しくなる夏には、家族や友人と一緒にタッペクスクを食べて、夏の体調管理をする人が多くいます。日本にも鶏肉を使った料理はたくさんあります。しかし、鶏を一羽丸ごと鍋に入れ、ニンニク、ナツメ、もち米、高麗人参などを加えて長時間じっくり煮込み、鶏肉とスープを一緒に食べる韓国式のタッペクスクは、日本ではあまり一般的ではありません。日本の人にとっては、少し珍しく感じる韓国料理の一つではないでしょうか。
鶏を一羽丸ごと鍋に入れて煮込む
タッペクスクの大きな特徴は、鶏肉を細かく切って焼いたり、濃い味付けをしたりするのではなく、鶏を一羽丸ごと鍋に入れて煮込むことです。まず鶏をきれいに下処理し、大きな鍋に入れます。そこに水を加え、ニンニク、ナツメ、もち米、ファンギ(黄耆)などを入れて、じっくり煮込みます。家庭や店によって使う材料は少しずつ異なります。シンプルに鶏とニンニクだけで作ることもあれば、高麗人参や栗、ナツメなど、さまざまな食材を加えて作る場合もあります。長い時間をかけて煮込むことで、鶏肉はとても柔らかくなります。そして骨の周りからも旨味が出て、スープにも深い味わいが生まれます。初めて見る日本人にとっては、大きな鍋の中に鶏が一羽そのまま入っている姿も印象的かもしれません。
タッペクスクにはいろいろな材料が入っている
タッペクスクは、単に鶏を茹でただけの料理ではありません。さまざまな食材を一緒に煮込むことが特徴です。特にニンニクは、韓国料理ではよく使われる食材です。鶏肉の臭みを抑えるだけでなく、スープにも独特の香りと風味を加えてくれます。ナツメを入れることも多く、スープにほんのりとした甘みを与えてくれます。
そして、もう一つ重要なのがもち米です。
鶏のお腹の中にもち米を詰めて一緒に煮込む場合もあります。鶏から出た旨味がもち米に染み込むため、柔らかく、香ばしい味わいになります。さらに、高麗人参、ファンギ、栗などを加えることもあります。こうした食材は、韓国では昔から健康を意識した食事に使われてきたものです。
なぜ韓国では夏に鶏料理を食べるのか?
タッペクスクが特に有名なのは、夏の滋養食として食べられているからです。韓国の夏は非常に暑く、汗をたくさんかくため、体力を消耗しやすい季節です。そこで韓国では昔から、暑い時期にあえて温かい料理を食べて体をいたわる食文化が発達してきました。代表的なのが、タッペクスクとサムゲタンです。韓国では夏の「三伏(サムボク)」と呼ばれる時期に、鶏肉を使った滋養食を食べる習慣があります。
サムゲタンは、鶏の中にもち米、高麗人参、ナツメ、ニンニクなどを入れて煮込む料理です。一方、タッペクスクはより素朴で、使う材料や調理方法にも幅があります。そのため、両方とも似た料理に見えますが、韓国では別の料理として認識されています。
タッペクスクはどうやって食べる?
鶏が十分に煮えたら、鍋から取り出し、食べやすい大きさに肉をほぐして食べます。柔らかくなった鶏肉を塩につけて食べると、鶏本来の淡白な味を楽しむことができます。キムチやニンニク、ニラなどを一緒に食べることもあります。そして、タッペクスクのもう一つの楽しみがスープです。
鶏肉をある程度食べた後、残ったスープにもち米や米を加えて、お粥のようにして食べることがあります。鶏から出た旨味たっぷりのスープで作るお粥は、とても優しい味わいです。一つの鍋から鶏肉、スープ、そして最後のお粥まで楽しめるところも、タッペクスクの魅力です。
日本にも鶏料理は多いが、韓国のタッペクスクとは違う
日本にも鶏肉を使った料理は数多くあります。焼き鳥、親子丼、唐揚げ、水炊きなど、日本人にとって鶏肉は非常に身近な食材です。その中でも「水炊き」は、鶏肉を鍋で煮込んで食べるという点ではタッペクスクと似ています。しかし、韓国式のタッペクスクのように、鶏を一羽丸ごと鍋に入れ、ニンニク、ナツメ、もち米、高麗人参などを加えて長時間煮込み、夏の滋養食として食べる文化とはかなり違います。そのため、日本の人が韓国旅行中にタッペクスクを食べると、「日本にはあまりないタイプの鶏料理だ」と感じるかもしれません。
暑い日に熱い料理を食べる韓国文化
韓国の夏の食文化で面白いところは、暑いからといって必ずしも冷たい料理ばかりを食べるわけではないことです。むしろ、暑い日に熱いスープ料理を食べることがあります。タッペクスクやサムゲタンは、その代表的な存在です。もちろん、特定の料理を食べれば暑さに負けないということを科学的に断定することはできません。
しかし、暑い夏に十分な栄養と水分を取り、しっかり食事をすることは、健康的な夏を過ごすうえで大切です。そして何より、家族や友人が大きな鍋を囲み、一羽の鶏をみんなで分けて食べるというスタイルそのものが、韓国の食文化を象徴しているように感じられます。
韓国旅行で一度は食べてみたい料理
韓国を旅行する日本人には、サムゲタンだけでなくタッペクスクもぜひ一度食べてみてほしい料理です。特に山や渓谷の周辺には、タッペクスクを専門に提供する店が多くあります。大きな鍋の中に鶏が一羽丸ごと入り、ニンニクやナツメなどの材料と一緒に出てくる光景は、日本ではなかなか見ることができません。最初は少し驚くかもしれません。
しかし、柔らかく煮込まれた鶏肉を塩につけて食べ、旨味の出たスープを味わい、最後にはお粥まで食べてみると、韓国の人々がなぜ夏にこの料理を好んで食べるのか、きっと理解できるでしょう。タッペクスクは、決して派手な料理ではありません。鶏一羽と身近な食材を鍋に入れ、時間をかけてじっくり煮込み、みんなで分けて食べる素朴な料理です。しかし、その中には韓国人が長い間大切にしてきた「暑い夏を元気に過ごしたい」という思いと、家族や仲間と一緒に食事を楽しむ文化が詰まっています。暑い夏の日に、汗をかきながら熱々のタッペクスクを食べる。これもまた、韓国ならではの夏の過ごし方の一つなのかもしれません。




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